寂しがりヒーロー
「それでもカモちゃんの前では呼び捨てにして。敬語もカモちゃんの前では禁止」


本当は、カモちゃんの前じゃなくても敬語は使ってもらわなくていいんだけど、なんかこの高校の伝統らしいから、言わないことにした。
まぁ、僕は敬語使うの苦手だからある程度話すようになればすぐ敬語外しちゃうんだけど。


「伊月さんは入学早々トップである神藤先輩もナンバー2もナンバー3も一人で秒殺だったじゃないですか」


...それは...その先輩方が喧嘩しようって言うんだもん。
この高校じゃ男子は強くなきゃ先輩に認めてもらえないらしくて。
つくづく変な高校だなーって思うけど、先輩の考えに背くわけにはいかないし、カモちゃんと違う高校には絶対行きたくなかったから。

だから先輩と殴り合いをすることになって、なんかみんな簡単に倒れちゃったって訳。
そんな力が僕にあるなんて、僕も知らなかったけど。


「でも知ってるでしょ?普段の僕の弱さ」


そう。
そんな力が出たのはその時だけ。
無事に入学した後に対戦を申し込まれた時は簡単にやられちゃった。

相手が拍子抜けするほど、普段の僕は弱いんだよね。


「伊月さんはカモさんが絡んでないと力が発揮出来ないんですかね」

「そうかもね。あの時はカモちゃんから離れたくないっていう一心で喧嘩してたから」


っていうかカモさんって。
カモちゃんの本名教えてなかったっけ。
まぁいっか。
僕も本名で呼んでたの、むかーしむかしのことだから。


「でもまぁ、安心してください、伊月さん。伊月さんは俺らが守りますよ」

「そうです。任せてください」

「うん。ありがとー」


高校のトップが周りに守られてるって変な話だけどね。



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