寂しがりヒーロー
目の前では、驚きの光景が広がっていた。

瞬や雄の動きは素早く、ふーは頭が良いため相手が殴ってくる位置を察知することができる。
そんな実力のある彼らが、驚くほど早く、次々と倒れていくのだ。


「...っくそ...なんだよ、コイツ...っ」

「...強すぎる、だろ...」


仁太くんは強い。
それは、総合的に見ても、そうであると言えた。

スピードも、頭の回転の速さも、一つの攻撃の威力の大きさも、かなり秀でている。

相手の意図を読み、相手の隙を見つけては殴り、蹴り。
自由自在に、仁太くんのペースで全てが進んでいく。


「ふはっ、弱すぎ。確かに他の高校よりは動きが速いし計算されてるけど、これでトップなんて、脆すぎるトップだな」


仁太くんの息は上がっていないし、攻撃だって受けていないらしく、楽勝といった様子で笑っている。

怪我だってしていないみたいだし。


「伊月さん...すいません...」

「...いや、謝らなくて良いよ」

「...あぁ。俺もいるからな」


そう言って、絋ちゃんが一歩前に出る。


「...へぇ、ナンバー2のお出まし~ってわけ」


楽しそうに仁太くんは笑って、絋ちゃんを視界に捉えた。
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