寂しがりヒーロー
「...俺、早く伊月としたいんだけどね、本当は」

「伊月さんの手は...煩わせねぇ」


絋ちゃんの表情は本気だ。


「...分かりました。えっと、下の名前、何でしたっけ」

「絋だけど」

「じゃあ、絋先輩、よろしくお願いしますね」


そう言って仁太くんは絋ちゃんを殴ろうとする。
だけど、絋ちゃんはそれを避けた。


「ふーん...他の奴らより強いのか。さすがナンバー2」


仁太くんはそう呟くように言って、絋ちゃんの拳を避ける。

正直、すごい。
お互い避けて、殴って。
だけど、明らかに今、絋ちゃんが劣勢だ。

仁太くんはまだまだ余裕そうなのに、絋ちゃんは体力を消耗している。

仁太くんの動きには、無駄がないんだ。
だから、速いし無駄な体力を使わない。


「...っはぁ、はぁ」

「疲れてるじゃないですか。大丈夫ですか?」

「...ふざけんなっ」


余裕そうにヘラヘラ笑う仁太くんに、絋ちゃんはイラついている。

それが余計に、ペースを乱す。

仁太くんは全てを読んでいるのかもしれない。

どうすれば相手を動揺させることが出来て、どうすれば自分が優位に立てるのか。
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