寂しがりヒーロー
それから暫くそれが続いて、ついに絋ちゃんは倒れた。
絋ちゃんが傷だらけなのに対して、仁太くんは少ししか怪我をしていない。


「...伊月、お前の番だよ」

「...すいません、伊月さん」

「いや、全然」


...正直、勝てる気がしない。
今の僕じゃ...。


「あ、そうそう。言い忘れたけどさ」


仁太くんが思い出すように話し出す。


「...何?」

「...伊月のこと、俺色々聞いてきたから、ある程度知ってるんだよ」

「...何が言いたいの?」

「...お前がカモちゃんって呼んでる女がいるんだよな?」

「...カモちゃんがどうしたの?」

「その女が絡んでなきゃ、お前、本気出さねぇんだろ?」


...なんとなく、言いたいことが分かった。


「...本気でやってくんなきゃつまんねーからさ。その女、拉致ったから」

「は...?」

「お前が俺に勝てば、居場所を教えてやるよ」


なるほど。
カモちゃんを人質にして、僕と本気で喧嘩しようってわけか。

...カモちゃん絡みだと、確かに僕は自分を制御できなくなる。


「...さぁ、始めようか。カモちゃんって女を、お前がどれだけ思ってるか、見せてもらうよ」


仁太くんはそう言って、僕に殴りかかった。
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