寂しがりヒーロー
「...えへへ、ごめん、仁太くん。仁太くんがあまりにも強くて、忘れてたよ。僕が喧嘩をしてる意味。...僕を本気にさせてくれて、ありがとね」


僕がそう言うと、仁太くんは少し驚いたような表情をした後、ニッと笑った。


「やっとマジになってくれたってわけね」

「...カモちゃんのこと、助けなきゃいけないからね」


そう言って僕は、思い切り仁太くんを殴った。
それを仁太くんはギリギリでかわすけど、僕はすぐにまた他の場所を殴った。


「いって」


仁太くんは一瞬フラッと傾いた後、すぐに重心を立て直した。


「...っはは、本気を出すと、伊月はここまでになるんだな。...やっと見つけたよ。俺が喧嘩してぇヤツに」


仁太くんは楽しそうに言う。

殴られてこんなに楽しそうにしてる人を、僕は今までに見たことがないけど。

僕はどう反応すればいいか分からなかったけど、小さく笑った。


「今度は俺だな」


仁太くんはそう言って、僕を殴ろうとする。
それを僕は避けるけど、すぐに仁太くんに殴られる。


「...っ」


仁太くんは、相手の技をすぐに自分のものに出来る...ってこと?

...それなら、僕にしか出来ないことをしなきゃいけないね。


僕は仁太くんを殴り、かわされたあと、すぐに仁太くんの腕の下を潜り抜け、後ろから蹴った。


「...っ、なるほどな」


仁太くんより僕が小さいからこそ出来ることで、仁太は出来ないこと。

あまりにも下に屈みすぎると、僕より体勢を立て直すのが遅くなって、僕が有利になってしまうから。

でも、こんなにちゃんと色々考えて喧嘩したのは、初めてかもしれない。
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