寂しがりヒーロー
「カモちゃん、ごめんけど、僕らちょっと遊んで帰るから、待っててくれたのにごめんけど、先に帰ってて?」

「えー!すっごく待ったのにぃ」

「ごめんごめん」

「わりぃ、俺の歓迎会だ。男だけでやりてぇからさ」


仁太くんの言葉に、カモちゃんは頬を膨らませながらも「わかったよ、仕方ないなぁ」と教室を出ていった。


「...で?」

「...で、とは?」

「いや、説明!」


とぼけた様子の仁太くんは、絋ちゃんにつっこまれてハハッと笑いながら、話してくれた。


「いや、さすがにマジで拉致ったりはしませんよ。俺の目的はアイツじゃなくて、伊月と勝負することだったんで。だから俺のスマホを無くして、探してもらってるっていう設定にしたってわけです。まぁ、負けるのは予想外でしたけど。でも、アイツ、伊月ほどの奴が必死になるほどの女なのか?」


カモちゃんがどれほどの女の子なのかって?
そりゃあ、僕なんかじゃ...。


「...うん。僕じゃ勿体ないくらいのね」

「へー。俺にはわかんねぇな、そこまでの女って」

「...きっと、一緒にいれば分かるよ」

「え、コイツ、仲間にするんすかー?」

「ちょ、そんな嫌そうな態度とんなよ、えーっと...誰だっけ?」

「玲だよ!」

「あー、玲ね」

「あーもー!なんかイラつくんすけど、コイツ!」

「つか、実質ナンバー2だよな?風上」


絋ちゃんが思い出したように言う。


「...いや、いいっすよ。ナンバー1じゃない地位なんて、いらないっすから」

「...まぁ、俺もコイツのことさん付けなんかしたくないっすから!」


仁太くんがそう言うと、玲はうんうんと頷きながら言った。

案外いいコンビかもしれないな、玲と仁太くん。
< 59 / 108 >

この作品をシェア

pagetop