寂しがりヒーロー
僕らは校内に入り、廊下を歩く。

瞬は僕を送ると、「また休憩時間にでも来ますね」と2年の教室に向かった。

教室に行くまでが本当、長い。

2年生の先輩も3年生の先輩も、僕が通ると瞬時に頭を下げる。
全く、緊張感がすごくてマトモに歩けないよ。


「おはようございますっ!伊月さん!」


礼儀正しく挨拶をするのは、僕が入る前にトップだった3年生の先輩、神藤絋。


「あ、おはよー、絋ちゃん」


僕は絋ちゃんって呼んでるんだけどね。

一応先輩だし、トップだったんだし、さすがに呼び捨てはダメだろうって思ってたんだけど、絋ちゃんは上下関係をすっごく大事にする人で、呼び捨てでいいって言ってきた。

でも、一応敬意を込めて"ちゃん"をつけることにした。

『絋ちゃんでいい?』って聞いたら、『伊月さんって可愛いっすね』と微笑ましそうに見られた。
...複雑な気分。


「絋先輩が一番伊月さんに敬意示してますよね」


玲の言葉に、「本当、絋ちゃんって真面目」と賛同した。

体も大きくて逞しくて髪だって真っ赤でツンツンしてる絋ちゃんと、ナヨナヨしてて華奢で髪はちょっと色素が抜けた薄茶色の僕。

どう考えても立場は逆のはずなんだけどね。


「絋ちゃんって、よく僕にイラつかずにいられるよね。普通こんなヤツにトップの座取られたら怒りそうなものなのに」

「伊月さんのゆる~い性格のせいじゃないですかね。何されても怒れないですよ」


ゆる~い性格、ねぇ。
ゆるゆるしてなきゃ疲れちゃうもん。
みんなをまとめるトップなんか、向いてないからね。

だから普段は絋ちゃんがみんなをまとめてる。
僕がお願いしたんだけどね。
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