寂しがりヒーロー

グルグルグルグル、闇が渦を巻いて、頭の中を埋めていく。

そんな渦の中に、カモちゃんが立っている。


｢カモちゃん...！｣


僕はそう言って、カモちゃんの方に駆け出す。
だけどカモちゃんは、冷たい表情で僕を見て、遠ざかっていく。


｢カモちゃん...カモちゃん！｣

｢...嘘つき｣


その言葉は、きっとどんな言葉より僕を傷つけた。
その傷を抉るような、そんなカモちゃんの表情に、涙がどんどん溢れていく。

嘘つきなのはとっくに知ってる。
でも、カモちゃんに言われるのは、辛くて、苦しくて、涙が止まらない。


｢ごめん、ごめん...ごめん...許して、許して...っ｣

｢お...づ...い...き...｣


遠くで誰かの声がする。


｢ごめん...離れていかないで...もう嘘なんか...つかないから...っ｣


だけど、そんなこと、気にしてられなくて、僕は何度も何度も謝る。


｢おい！伊月！！｣


怒鳴り声にも似たその言葉で、僕は目を覚ました。

そこには、心配そうに僕の顔を覗き込む、仁太くんがいた。


｢じ...んた...くん｣

｢...お前、ずっと謝りながら泣いてたから｣

｢えっ...｣


頬に触れると、確かに涙で濡れていた。
僕は必死に涙を拭った。


｢ここ...｣

｢保健室。先生がいなくて、今カモが呼びに言ってるよ。心配すんな、カモには見られてねーから｣

｢...そっか、ありがと｣

｢...つか、お前大丈夫か？｣

｢あぁ...熱なら多分すぐ...｣

｢じゃなくて。カモのことで悩んでんだろ。つか、俺のせいか｣

｢いや、仁太くんのせいじゃないよ。僕が悪いんだ。僕が嘘つきだから｣


その言葉を発してすぐ、保健室の扉が開いた。