寂しがりヒーロー
...聞かなきゃよかったのかな。

いや、聞き間違い?
...そんなわけないじゃん。


「好きって...」

「なんつーの、守ってやりたくなるよな」


それがどういう意味なのか、僕にも分かる。
守ってあげたい。
それは、恋愛感情の好き。

だけど、カモちゃんは、僕と付き合ってる訳じゃない。
だから、仁太くんに何も言えない。

好きになるな、なんて。
カモちゃんは僕のだ、なんて。

そんなワガママ、言う資格なんて無い。


「お待たせー。伊月、帰ろ?」


カモちゃんのふわっとした笑顔も、僕のものだって勝手に思っちゃってた。


「...うん」


僕はゆっくり体を起こして、カモちゃんに支えてもらいながら保健室を出ようとする。


「じゃーな、伊月。ちゃんと熱下げろよ?」

「...うん」


仁太くんの顔が、見れない。

仁太くんはきっと、カモちゃんを見てるから。
カモちゃんは、誰を見てるんだろう。

...もし、二人が見つめあってたら...?

僕は怖くて、視線を下げたまま保健室を出た。
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