寂しがりヒーロー
「伊月、辛い...?」


帰り道にカモちゃんが心配そうに声をかけてくれたのは、僕が一言も発しないからだと思う。


「...ううん。大丈夫」


そう言ったけど、カモちゃんは心配そうに僕を見る。


「伊月、おんぶしてあげる!」


そして、予想外なことを言った。


「へっ...!?いいよいいよっ、そんな...僕重いよ?」

「伊月はちっちゃいし楽だよ」

「嘘だー...」

「いいからいいから!ほら、乗って!」


カモちゃんが僕の前にしゃがむ。
その行動が、可愛くて少し笑ってしまった。

僕のために、必死になってくれる。
確かにその通りで、嬉しいのと同時に、不安もある。
仁太くんにも、こうやって必死になるのかなって。

僕は恐る恐る、カモちゃんの背中に乗った。

カモちゃんは少しふらつきながらゆっくり立ち上がる。


「カモちゃん、無理しなくていいよ...?」

「いいのいいの!私がおんぶしたいの...!」


無理してるのがバレバレで、息が切れてるのだって分かる。


「カモちゃん...僕、カモちゃんのこと...」

「...っあ、ごめん、もう一回言って...?」

「...ううん。なんでもない。ありがとって、言いたかっただけ」

「...そう?辛かったら言ってね」

「...うん」


カモちゃんのこと、好きだよ。

今までなら言えたと思う。
簡単に、当たり前に。

弟として見られてるって、こんなに感じることは無かった。
好きって言ったら、私もって無邪気に笑ってくれてた。

でも、僕はワガママになっちゃったみたい。

弟として好きになられても、もう僕は、嬉しくないよ。
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