寂しがりヒーロー
家について、僕はベッドに崩れ落ちるようにして倒れた。


「伊月!?大丈夫!?」


どうやら熱が上がってきたみたい。
なんか、大丈夫じゃない。
それに、どうしようもなく、寂しい。


「私、ゼリーでも買ってくるよ。それで薬飲も?」


そう言って部屋を出ていこうとするカモちゃんの服の裾を、僕は引っ張った。


「...や、だ...」

「伊月...?」

「...一緒に、いてよ。ゼリーなんて、いらないから」


ただ、側にいてほしい。
誰のものにもなってほしくない。
僕と一緒に、いてほしい。


「...うん。わかった。ここにいるから、寝ていいよ」


カモちゃんは僕のワガママを受け入れて、微笑んでくれた。


「...カモちゃん...僕、一人は...嫌だよ」

「伊月は一人じゃないよ?」

「...捨てられちゃうんだよ、きっと、とられちゃう...」


不安がグルグル渦を巻く。


「伊月?何言って...」


僕の記憶には、両親に捨てられた記憶が甦っていた。

カモちゃんも、僕を捨てるのかなって。


「とられちゃう、仁太、くんに...」

「仁太くん?」


荒い息のせいで、言葉が途切れ途切れになる。

それでも僕は、カモちゃんに近くにいてほしくて、必死に言葉を紡いだ。


「嘘つき、で...ごめんね。隠し事して、ごめんね。でも、僕は...好き、だから...」


僕は、そこで意識を手放した。
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