寂しがりヒーロー
「んん...伊月...?起きてたんだ...」

「カモ、ちゃん...」


電話を切って暫くして、カモちゃんが目を覚ました。


「大丈夫?辛くない?」

「うん。大丈夫だよ。だから...もう帰って?」

「え...?いや、どうせ今日は学校休んでるし、今日一日一緒にいるよ」

「それじゃ...困るよ...」


僕は悩む。
優しいカモちゃんに、僕を残して帰ってもらう方法を。
僕が一緒に逃げたら、きっとカモちゃんを危険な目に遭わせちゃうから。


「困るって...なんで?」

「えっと...ほら、風邪、移っちゃうし」

「さっき大丈夫だって言ったじゃん。それに、風邪は移した方が早く治るらしいよ!」


そんなの嘘に決まってるじゃん...。
カモちゃんはやっぱりなんでも信じちゃう。
だから心配で、周りに騙されてどこかに行っちゃう気もして...気が気じゃないんだ。

...だから、僕が守りたい。


「いいから、出てって、ね?」


僕はそう言ってグイグイカモちゃんを玄関の方に押していく。


「え、ちょっと、伊月!押さないでって、ねぇ!」


カモちゃんの声を無視して、僕はカモちゃんを出ていかせようとする。
そして、玄関の扉を開けた途端...。


「きゃあっ!」


カモちゃんの叫び声がしたと思ったら、カモちゃんが体勢を崩し、僕らは玄関の外へ倒れ込んだ。


「いったぁっ...」

「いったい...」

「...へぇ、随分と盛大な歓迎だな。俺らと勝負するっていうのに、彼女とイチャイチャしちゃって」


カモちゃんの上に覆い被さるようか形で、僕は顔を上げた。
そこには、十数人もの人達が、僕らを見下ろしていた。
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