寂しがりヒーロー
いつもより防御が速くて、いつもより攻撃力が強い。

仁太くんは今、本気だ。

それに今、仁太くんには敵しか見えていない。
僕もカモちゃんも、呆然と見つめることしか出来なかった。

でも、僕はすぐに思った。

やっぱり僕じゃ、カモちゃんを守れない、と。
いつだって、助けてくれるのは仁太くん。

きっと、カモちゃんは仁太くんのこと、好きになっちゃう...。

カモちゃんをチラッと見ると、仁太くんを見つめていた。

やっぱり、僕は敵わない...。


「...っ、はぁっ、はぁっ、大丈夫か?」


相手を倒し終えた仁太くんが、振り向いて僕らを見た。


「うん。仁太くんのお陰で。...ほんと、ありがと」

「カモは?」

「私も、大丈夫だよ。ほんとすごいね、仁太くん...」


カモちゃんの瞳は、キラキラしていて、仁太くんを見つめている。

なんだか、辛い。
辛くて、苦しい。
熱なんかより、辛くて苦しくて、もっと深いところが、痛い。


「...カモ」

「ん?何...?」


仁太くんが、真剣な表情になる。
もしかして、告白、とか...?

そんなの、見れないよ...。

僕はぎゅっと目を閉じた。

でも、仁太くんの口からは、予想外の言葉が出てきた。


「...伊月に、ゼリーかなんか買ってきてやってくれ」

「「へ??」」
< 87 / 108 >

この作品をシェア

pagetop