寂しがりヒーロー
「えっと、呼ばれて来た、逢坂伊月です」

「あ、あなたが逢坂くん、ですか。僕は最宮高校の生徒会長をしている、木森真次です」

「...あの、それで、話っていうのは...」

「あっ、えっと...この高校、綺麗ですよね!」

「...へ?」


生徒会長さんの言ってることが、一瞬理解できなかった。
あまりにも予想外だったから。


「え、あ、そう、ですか...?」

「えぇ。とても...。あ、あと、この学校の学園祭、楽しそうですよね、クラスの催し物、とか」

「あ、はい...僕も楽しみにしてます」

「そ、それと...あ、この高校、生徒が生き生きしていると評判です。生徒のみなさんの元気さは、うちの高校も見習いたいと思います」


生徒会長さんは一生懸命話を続けているように見える。


「そ、それに...」

「あの、そろそろ本題に入ってもらえませんか?友達、待たせてるんで」


僕は我慢できなくなって生徒会長さんにそう言った。
すると、生徒会長さんは、「すみません...」と一言、謝った。


「それで、話ってなんですか?」

「...無い、です」

「は...?」

「...っ、すみません、話なんて、無いんです」


もう、意味が分からない。


「じゃあなんで僕を呼び出したりなんか?」


僕がそう聞くと、生徒会長さんは視線を落とし、「時間稼ぎをするように、言われたんです...」とか細い声で言った。


「時間稼ぎ?何のためにそんなこと...」

「...逢坂くんの周りの人達を拉致するためだと...言われて...本当、すみません!」


生徒会長さんは怯えた様子で僕を遠慮がちに見る。



「...誰に...言われたの?」

「...最宮高校の、OBの方達です...。逢坂くんの周りの人達を拉致して、誘き出す、と...」


久々の感覚。
頭に血が上って、じっとしてられない。

...イライラする。


「...その人達、どこにいるって?」

「...っ、最宮高校の、物置小屋だそうです」


さっきと変わった僕の声色に、生徒会長さんは怯える。

そんなことは無視して、僕は最宮高校へと走った。

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