寂しがりヒーロー
「仁太...くん...」

「...ったく...突然逃げやがって...」


息が切れてて、雨に濡れてて、寒そう。


「ごめん、なさい」

「俺は謝罪が聞きたくて来たんじゃねーの」

「...カモちゃんに、会わせるため?」

「...当たらずとも遠からずってヤツだな」

「...なに、それ」

「んー...まぁ、とにかく俺はお前を一人にさせないために来た」

「カモちゃんは...?」

「...さあな。俺がいたときは放心状態って感じだったけど」

「...そっか」


やっぱり、ショックだったよね。
僕がこんなので。


「...僕、どうしたらいいんだろ」

「...どうしたら、か。んー...カモの気持ちでも考えてみたらどうだ?」


...そんなことしたら、僕は...。


「...自分の好きなヤツは、弟みたいに可愛くて、いつもお世話をしていた。ソイツは独りを極度に嫌い、親に刻まれた傷から未だ逃れられないまま」

「...やめてよ」

「だからずっと一緒にいた。自分が守ってあげようと。だけど、ソイツは自分を傷つけた奴らを次々と殴り倒した」

「止めてってば!」

「放心状態になるしかなかった。今まで見たことがないソイツの姿に」

「止めてって言ってるじゃん!」

「だけど!」


僕の叫び声を制止するように、仁太くんは怒鳴るように声を上げた。


「だけど、ソイツは泣きそうになりながら逃げ出した。自分の元から離れるように。...これはあくまでも俺が勝手に考えたカモの心情だ。でも、お前が考えてるカモの心情よりは近い自信がある。カモは...今きっと、戸惑ってんだよ」

「戸惑ってる...」

「そう。伊月の見たことがない姿にも勿論戸惑ったとは思うけど、自分を助けてくれた。そんな伊月が泣きそうになりながら走って逃げた。なんで逃げたのか。なんで泣きそうなのか。理由が分かんねーから、戸惑うしかねーんだよ」
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