雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
大げさに痛がっている來世を放置して、実央が思葉の机に頬杖をついた。
「思葉ちゃん、松山さんと仲良かったの?
あの子と関わっているところ見慣れないから、ちょっとびっくり。
ああいうタイプの子は苦手だとばかり思ってたよ」
「ううん、全然だよ。
一度も話したことないし、確かにちょっと苦手なタイプの雰囲気がしてたし。
それにあたし、さっき名前知ったばかりで……」
「遅れてるぞー思葉、もう少し美女とイケメンに対して興味持てよ」
「來世、次富美子おばあちゃんが引っ掛かっても助けないからね」
「さーせんっした」
茶化すようにニヤニヤ笑っていた來世だが、思葉が冷たく言い放った一言に素早く謝罪する。
來世はこのことに関しては思葉に頭が上がらないのだ。
もはやお約束と化しているやり取りに実央は呆れてため息をついて話を続ける。
「あ、やっぱりそうだったんだ。
辻森と同じ意見になっちゃうけど、思葉ちゃんって自分から遠い人達に対しては本当に興味持たないよね。
他のクラスの人の噂を積極的に話しているのとか、全然想像できないもん」
「うーん……そうだね、あんまり興味ないかな」
物に宿っている何かが観えたときは積極的に知ろうと動くけど、と思葉は胸の内でつけ加えた。
実央が一口チョコレートの袋を開けながら軽く肩をすくめる。
「放課後にはきっと噂になってるかもね、オカ研イチの華やか美女が一度も話したことのない女子に突撃したって」
「これで思葉が男だったら確実にコクられたとかあいつら実はデキてるとか何とか尾ひれがついてたよな、つまんねぇの」
「それ、あんたが付けたかっただけでしょ?」
「バレてましたか」
「バレバレよ」