雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕





松山が目に満足そうな色を浮かべて何度も頷いたから、彼女のいいように解釈されたのだと気づく。



「やっぱり、日常的にアンティークな商品と関わっている人はそういったものに関して敏感になると言うからね、よかった。


皆藤さんに相談を持ちかけたのは、きっとそうじゃないのかなと思ったからなのよ」



(ああ、やっぱり……)



関わったらろくな目にあわない、と思葉は直感した。


それでも話を聞く姿勢を崩せないでいるのは、松山が本当に困っているのだと分かったからだ。



「……オカルト研究部部長の、唐津涼子先輩は知っているかしら」


「名前なら」



昨日の帰り、実央が少しだけ話していた3年生の名前だった。


松山が脚を組み替え、膝に載せた両手の指先を合わせて話を続ける。



「唐津先輩は、オカルト研究部の中でも特に非科学的な事象についての知識が豊富な人なの。


だから部長をされているんだけどね。


去年からずっと、確実にかつ安全な降霊術がないか研究をされていて、夏休みが明けた頃からは独自に術を編み出そうとしていたの」



松山の話を、思葉は半分実感を抱けないまま聞いていた。


だって、降霊術の研究やそれを編み出すことなんて、思葉にとって非日常的すぎることなのだ。


けれどもそれを馬鹿馬鹿しいことだと突っぱねられもできないのは、自分が玖皎に深く関わっているからである。


わざわざ危険なことをしたくないだけで、霊や妖怪の存在を否定しているのではない。



「それで唐津先輩が完成させた術を実行しようと、春休み中に学校に忍び込んだんだけど……これも噂になっているから知っている?」


「松山さん、もしかして行ったの?」



思葉がわずかに身体を引いて尋ねると、松山は白く細い手をひらひら振った。




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