雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
ふいに、來世を挟んで反対側を歩いていた行哉の黒目がこちらに向けられる。
思葉ではなく、彼女が背負っている鞘袋に視線を送っていた。
「それも引き取ったものなのか?」
「それって?」
「その鞘袋だ、中身は木刀か竹刀なのか?」
「あ、おれ分かったぞ。
そこに入ってんの、例の太刀だろ?」
思葉が答えるより早く、來世が好奇心に色を染めた目つきで鞘袋をつついた。
「うおっ」と玖皎が驚いた声音を発する。
(あ、そうだ、あたし玖皎連れてきてたんだっけ)
2人と話しているうちに失念していた。
「太刀?真剣のか?」
行哉がわずかに目を見開く。
それにやはり來世が思葉よりも素早く答えた。
「ああ、去年の冬だったっけな、見せてもらったんだよ。
しかもこれ、満刀根のじいちゃんのじゃなくて思葉の私物なんだってさ」
「そうなのか?」
「え?えっと、あ、うん」
「驚くのはまだ早いぜ、行哉。
この刀、平安時代につくられた刀なんだよ」