雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
続けてまた質問される。
「それにはなにか名前があるのか?
有名な刀剣にはあるだろ、武将のような名前が」
「おー、あるぜ。
えっと確か……『切り捨て御免』とか、なんかそんな感じ」
「んなっ……」
玖皎が絶句する。
無理もない、とんでもない名前の言い間違いをされたのだから。
「なんであんたが答えんのよ。
あと名前全っ然違うからね、覚えてないからって適当なこと言わないの」
思葉がまた脇腹を小突こうと肘を曲げて、來世が両手を出して「待った」と示す。
「わーかったからすぐに殴るなって。
暴力反対、良くないっすよ」
「あんたが余計なこと言わなきゃいいのよ」
「へいへい、さーせんっした。んで、なんて名前だったっけ?」
また來世が鞘袋を人差し指でつついてくる。
玖皎は今度はさほど驚きはしなかった。
「霧雨玖皎だよ」
「それだそれだ、そんな名前だった。
いやー、やっぱりかっこいい名前が多いよな、日本刀って」
「確かにねー。燭台切光忠とか菊一文字則宗とか、備前長船長光とか不動国行とか、国宝に大包平ってのもあるよね。
あたしは個人的に鶴丸国永が好きかな、名前の響きがきれいで」
「詳しいな、思葉」
行哉が瞬きをして、來世がひらりと手を振った。