雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
「そりゃあ骨董品店の子が、古美術まったく知りませんーじゃ恰好つかないだろ」
「うーん、というより、おじいちゃんからこの太刀をもらって興味が湧いたから調べただけだよ。
刀にもそれぞれエピソードがあってね、意外と面白いわよ。
人っぽい名前の刀が多いから、そういう人の伝記を読んでるみたいな気分になるし、日本史好きにはもってこいだね」
「の割にはいっつも日本史ピンチだよな」
「……開国前までなら自信あるんだけどなぁ」
現在、学校では幕末から戦後までの歴史の変動を学習している。
特に政治が絡んでくる内容は苦手だ。
そのため、思葉は毎回のテストでギリギリ赤点を回避する結果となった。
ちなみに來世はどんなに悪くても8割は切らない点数である。
そのことを思い出して妙に腹が立ち、思葉は來世の脇腹を折り曲げた指でぐりぐり押した。
野放図な話を続けているうちに、別れ道に差し掛かる。
喋っているのは思葉と來世で、行哉は二人の話の聞き役に徹していた。
本当に、こういうところが正反対である。
「……じゃあ、抜き打ちテストやるかもっていうのは割とガチ情報ってわけ?」
「らしいぜ、先輩たちが言ってたし、ウチは進学校だからやっても不思議じゃねえだろ」
「なんで教えてくれなかったのよ、あんたの方がよっぽどケチじゃない」