雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
「まあテストっつっても課題の内容が中心になるらしいからな。
思葉ならけっこう真面目にやる方だし、心配ねえだろうって思って言わなかった」
「あたしが課題やっただけで赤点回避できるとでも思ってんの?」
「そんなことで威張るなよ」
呆れ顔の來世にため息で返して、思葉は一旦立ち止まった。
ここから先は二人とは方角が違う。
「まあ、3教科だけだったら何とかなるかな、今夜頑張って勉強するよ。
ありがとね行哉くん、荷物持ってくれて」
「えっ、それ行哉の荷物じゃなかったのか?」
「ああ」
行哉が短く返事をし、思葉に荷物を返そうと腕を伸ばす。
すると來世がそれを遮るように立ち、兄の反対側の手に提げてあった鞄を取った。
不思議そうな表情になる行哉に、にかっという音が聞こえそうな笑みを向ける。
「なんだ?」
「家まで送って行ってやれよ、それけっこう重そうだしさ」
「え?いいよいいよ。
この荷物、言うほど重くないし、家までだって5分もかかんないし」
思葉は空いている手を横に振って断る。
それを聞いた來世がこちらを向き、わざとらしく大きなため息をついた。
「分かってねえなあ、思葉。
こういうときは素直に送られてくもんだぜ、夜道は危ないから」
「夜道って……」
「そんなんだからいつまで経っても春が来ないんだよ」
「はあ?またその話?」