雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
來世の足が止まる。
校門の前だった。
眠そうな生徒、イヤフォンやヘッドフォンをつけている生徒、朝っぱらから元気な生徒がどんどん二人を追い越していく。
バス通学者らしき集団が通り過ぎたところで、來世が額を押さえてため息をついた。
「……絶対それだわ、原因。納得だわ」
「え、なに?もしかして行哉くん傷心中とかだったの?」
「いや、そうじゃねえんだよ。
話題自体はさほど問題じゃないっつーか、その話を振ったのがおまえなのが問題っつーか……」
「はあ?」
はっきりしないしゃべり方をする幼馴染に思葉は顔をしかめる。
校舎の時計へ視線を投げると、のんびりできる時間はないのでひとまず校門をくぐった。
隣に並んだ來世が、思葉の鼻先に人差し指を突きつける。
「思葉、あいつの前で恋バナなんかすんな」
「え、なんで?」
「なんでもだ、特におまえがしゃべるからまずいことになるんだよ。
とにかくダメ、絶対にすんな、全面禁止」
「だからなんでよ?傷心中でもないなら恋バナしたって問題ないでしょ?」
はあっ。
來世が大げさに竦めた肩を落とす。
どすん、というサウンドエフェクトが付きそうなオーバーアクションだ。