雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
「おまえ、それマジで言ってんのかよ。鈍感にも程があるだろうが」
「はあ?なにそれわっけ意味分かんない」
「分かれよ鈍ちん」
「あーもう、はいはい、とにかく行哉くんの前で恋バナしなきゃいいのね。
まったく納得してないけど了解はしておくよ」
思葉は右手を振って、來世から校舎の方へ顔を向けた。
別に校舎を見たかったわけではない、幼馴染と目を合わせていたくなくなったのだ。
左胸、お乳の奥の辺りが疼く。
頬と耳のあたりに火照りを感じる。
「納得してないって……それ、また忘れてぽろっと話振るフラグじゃねーかよ」
來世の呆れ声を聞き流す。
これ以上この話を続けたくない。
「おっはよー!」
そこへビタミンがたっぷり詰まったような、聞き覚えのある元気な声が飛んできた。
ほぼ同時に背中に衝撃が走る。
思葉は転ばないようどうにか踏み留まり、背中に張り付いている声の持ち主を睨みつけた。
「お、おはよう、実央さん……いきなり飛びつくのやめてよ、転びそうになったじゃん」
「えへへ、ごめんごめん。
あっ、偉い。今日はちゃんと髪まとめて来たんだね。
けどなんでもう早速乱れちゃってんの?」