雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
「うわ本当だ。うっそー、思葉ちゃんと一緒なのは嬉しいけど、辻森まで一緒とか……」
「中学からずっと同じクラスよね、あたしと來世。
もういい加減別のクラスになってもいいような気がするんだけど」
「うん?なんだよ思葉、おれと同じクラスで照れてんのかー?」
來世はふいとそっぽを向いた思葉の肩に腕を絡め、もう片方の手で頭を撫でる。
撫でるというより、掻き回すといった方が正しいやや乱暴な手つきだ。
乱れていた髪がさらに収拾のつかない状態になる。
「どこに照れる要素があんのよ、ばか來世、離して」
腕を振り回して抵抗する。
だが、それで「はいそうですか」と解放してくれるような幼馴染でないことは百も承知だ。
離すまいと両腕に力がこめられ、悪ノリされる。
助け舟に入ったのはもちろん実央で、綾乃はくすくす笑って三人を見つめていた。
「女の子に何してんのよ辻森。
いくら思葉ちゃんが幼馴染だからって、そんなことしてたら痴漢で訴えられても文句言えないわよ」
実央が來世の襟首をわし掴んで遠慮なく後ろに引っ張る。