雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕





隣に座る高峯(たかみね)が、軽く首をかしげながら肩をつつく。


するとずっと俯いていた矢田が顔をあげ、高峯の方を見ながらすっぱりと答えた。



「担任が男だから、返事したくない」


「……は?」



高峯の声が、この場にいる全員の心境を代弁する。


予想外すぎる言葉に、悪ふざけを口にする者もおらず、教室はおかしな空気で静まり返った。


しかし当の矢田は頬杖をついて窓の外へと視線を投げる。


瀬尾は出席簿を持ったまま、言葉を探すように唇をもぞもぞ動かしていた。


そこへ「せんせー」と、学年でもかなり目立つ、いわゆるギャルの部類に含まれる女子が間延びした声を発する。


彼女は思葉の前の席なので、すっと視線が集まった。


思葉は自分が見られているわけではないのについ下を向く。



「なんですか、折原(おりはら)さん」


「矢田さんの名前合ってるし、とりあえずいるし、そのままちゃっちゃと残りやっちゃいませんかー?


ほかにも色々と決めなきゃなことあるんでしょー?」


「えー、ええと……そ、そうだね。


矢田さんの次だから、ええと……横山理穂(よこやま りほ)さん」


「あ、はい」




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