雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
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來世の言っていた通り、午後は抜き打ちテストだった。
けれども内申点に反映されないからか、定期試験のときのように対策をする生徒はほとんどいなかった。
思葉も「今更だ」と開き直るタイプなので、特にテキストを確認することもなくテストを受けた。
(……赤点じゃない、はず)
そんなことを考えながら短いホームルームを終えて、思葉は春休み課題の過去問を抱えて国語教官室へ向かった。
その帰りに情報の教師にお使いを頼まれ、今度は機材を抱えてPCルームへと歩く。
授業でもない限りほとんど生徒が近寄らない棟の奥に位置しているせいもあり、誰もいない部屋は余計に静かに感じる。
配慮などいらないのに、足音を立てるのがなんだか憚られてしまう。
並んだコンピュータの列の間を通り、思葉はメインコンピュータの台に機材を置いた。
手渡されたメモの指示に従って動く。
「よし……これで全部やった、かな?うん、全部やったね」
ざっと部屋を見回して、やり残しがないことを確認する。
校舎の外からトランペットの音が響いてきた。
昨年末のドラマでたちまち人気になったバンドの代表曲で、思葉もよく知っているメロディだ。
音に合わせて軽く口ずさむ。