雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
中学に入学してからは、顔も合わせていない。
妹はもちろん父親とはほぼ絶縁状態だ。
そういうものなのだろうと割り切って考えられるようになったのは高校受験を控えた夏あたりで、それまでは心が苦しかった。
両親や兄弟について話す友達やクラスメイトに合わせて笑っていたけど、胸の奥は常に悲鳴を上げていた。
(あたしの家族は、あたしを受け入れることができないんだ。
そういう人達のところにたまたま生まれてしまっただけ……おじいちゃんのところに連れてきてくれたんだから、それだけは感謝しなくちゃ)
そう結論を出して以来、家族のことは深く考えないようにしていた。
きっとこれからも、彼女たちと関わることはないだろう。
自分の力を理解してくれる祖父がいて、気軽に付き合える幼馴染がいる、この生活に満足しているから、もう悩む必要はないのだ。
小さくあくびを漏らす。
來世の眠気が移ったのかもしれない。
「行哉くんの真面目なところ、少しは見習ったらどうなの?」
「それはムリ、おれとあいつとじゃ人種が違うし」
「何言ってんのよ、同じお腹から生まれてきたくせに」
「時々思うよ、行哉って本当におれの兄弟なのかって、似てないせいだな。
そういえば、今のクラスって兄弟の2番目とか末っ子率が高いんだぜ。
一人っ子は思葉入れても5人いたかなぁ」
「え、なんでそんなに詳しいの?なんか気持ち悪い」
「おぅい、いくらおれ相手でもストレートに言い過ぎだろそれ。
少しはオブラートに包んで……」