雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
「噂で聞いたんだけどさ……オカ研のやつら、春休み中に学校に忍び込んだらしいぜ?しかも夜な。
先生には見つからなかったらしいけど、塾の帰りに学校の前を通りかかった3年生が2人、校門よじのぼって入るところを見たんだってさ。
あ、ちなみに情報源はその人らだから、ガセじゃないし尾ひれも何にもついてねえぞ」
何せ部長と副部長だからな、と、なぜか來世が得意げに言う。
会ったことはないが來世からよく話を聞くので、嘘をつくような人達でないことはなんとなく知っていた。
思葉はため息をついて額に手を当てる。
ただでさえ昼間でも静かな校舎は気味が悪いのに、夜に好き好んで忍び込む生徒の神経が分からない。
「夜中って何してんのよオカ研……」
「さあな、そこまでは知らねえけど、なんか召喚させるような儀式でもやったんじゃね?
オカ研の部室前を通ると、高確率で何か唱えてる声が聞こえてくるし。
もしかして、噂によく聞く旧神話生命体でも呼び出してたりして」
「変なこと言わないでよ」
旧神話の頂点であり最も有名な生命体の絵を思い出して、思葉は慌てて追い払った。
フィクションだと笑い飛ばせない現実味を有するのが原作だ。
あんなものが出てきたらたまったものではない。
「おまえって本当に、そういうの苦手だよな」
「意気揚々と見てたあんたの神経がおかしいのよ」
「イアイアー」
「乗らないからね」
「ちぇっ」