雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕





「噂で聞いたんだけどさ……オカ研のやつら、春休み中に学校に忍び込んだらしいぜ?しかも夜な。


先生には見つからなかったらしいけど、塾の帰りに学校の前を通りかかった3年生が2人、校門よじのぼって入るところを見たんだってさ。


あ、ちなみに情報源はその人らだから、ガセじゃないし尾ひれも何にもついてねえぞ」



何せ部長と副部長だからな、と、なぜか來世が得意げに言う。


会ったことはないが來世からよく話を聞くので、嘘をつくような人達でないことはなんとなく知っていた。


思葉はため息をついて額に手を当てる。


ただでさえ昼間でも静かな校舎は気味が悪いのに、夜に好き好んで忍び込む生徒の神経が分からない。



「夜中って何してんのよオカ研……」


「さあな、そこまでは知らねえけど、なんか召喚させるような儀式でもやったんじゃね?


オカ研の部室前を通ると、高確率で何か唱えてる声が聞こえてくるし。


もしかして、噂によく聞く旧神話生命体でも呼び出してたりして」


「変なこと言わないでよ」



旧神話の頂点であり最も有名な生命体の絵を思い出して、思葉は慌てて追い払った。


フィクションだと笑い飛ばせない現実味を有するのが原作だ。


あんなものが出てきたらたまったものではない。



「おまえって本当に、そういうの苦手だよな」


「意気揚々と見てたあんたの神経がおかしいのよ」


「イアイアー」


「乗らないからね」


「ちぇっ」





< 78 / 178 >

この作品をシェア

pagetop