雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕





矢田の件以外には何事も起こらず、今日の授業はすべて終わった。


放課後に図書委員のカウンター当番をしていたら、もう下校時間近くになっていた。


これはクラスごと2人1組でやるのだが、相手は早退してしまったため思葉一人である。


貸出処理を行った冊数を確認していると、書庫から司書教諭の中谷(なかたに)がひょいと顔を出した。



「皆藤さん、ありがとう。


もうそろそろ時間になるから、今日はもう終わりで、また明日もよろしくね」


「はい」



自分も新着文庫を借りて、最後に忘れ物がないかを確認しに図書室をざっと見回る。


入学したばかりの頃から毎日のように通いつめているし、去年も図書委員だったため、中谷とはすっかり仲良しだ。


なのでこうしてたまに、まだ本棚に並べていない新着図書をほかの生徒よりも先に借りさせてもらえる。



「最近の子って、あまり活字に触れようとしないから嬉しいわ」



中谷に嬉しそうに言われて以来、図書室はますます学校の中でダントツに好きな場所となった。


今日借りたのは、海外のファンタジーシリーズの最新刊である。


前の刊がものすごくいいところで終わり、それから1年近くも経っていて、ずっと続きが気になっていたのだ。


今日は初回ということで、どの授業もまだ宿題は出ていない、早く帰って読もう。



「失礼します」



わくわくする気持ちを抑えながら挨拶をし、思葉は図書室を出た。




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