雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
思葉の記憶が正しければ、オカルト研究部は少人数なうえに圧倒的に女子の割合が高い。
そして唯一の男子部員がいた3年生が卒業した今は、新入生で入部してこない限り女子しかいないはずだ。
男子よりも女子の方が非科学的なものに惹かれやすいのだろうか。
「それで、その唐津?先輩がどうしたの」
「オカ研が学校に忍び込んだ噂に通じなくもないんだけど、なんか怪しい術だとか儀式だとかを開発したとか何とか言ってるらしくて」
「……何それ」
首筋に寒気が張り付く。
新学期早々、なぜこうもオカルティックな噂話が絶えないのか。
『火のないところに煙は立たぬ』のならば本当なのかもしれないが、いずれにせよ嫌な予感がするのでそれ以上は考えないでおく。
「みっこ先輩、あっ、ソプラノのパトリの先輩のことだけど、去年も唐津先輩と同じクラスだったんだって。
で、期末試験が終わった頃からかなぁ、なんか真っ黒ないかにも怖そうな本を齧り付いて読み込んでたらしくてね。
しかも授業中ノートに魔法陣のような呪文のようなものをびっしり書きまくってて、それもなんかニヤニヤしながらで……怖くない?」
聞かれるまでもない、怖い、怖すぎる。
隣の席にいるクラスメイトがにやけながらノートに理解不能の文章を書き連ねていたら……想像したら寒気がした。
「詳しくは知らないけど、やっぱオカ研ってイメージ通りにヤバいことばっかやってんのかな?
矢田さんも意外とノリノリだったりして、人って見た目によらないってよく言うし」
でもそんなの想像したくなーいっ、と実央がまたハンドルに寄りかかって頭を振る。
自分の進路のきっかけとなった人だから尚更、そんな風に考えたくないのだろう。