雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕





『なんか召喚させるような儀式でもやってんじゃね?』



來世の無神経な明るい声が鼓膜の奥で再生され、思葉は少しだけ八つ当たりで小石を蹴った。



「それにしても、辻森ってよく思葉ちゃんに噂話聞かせるよね?しかも早いし。


思葉ちゃん、なんか辻森に頼んでるの?」


「え、そういうんじゃないよ。


今まで席が前と後ろだったから、こっちが何も言わなくても向こうから勝手にベラベラ喋ってくるし。


たまに朝とか帰りに一緒になったときに聞いたりとか、お互い暇でなんとなくLINEしてる最中に聞かされたりとか……って感じかなぁ。


あたしから聞く事の方が少ないよ?あいつ基本喋りたがりだからね」


「……思葉ちゃんと辻森ってさ」



ふいに実央がいくらか落ち着いた声音になり、唇を少し尖らせて眉間にシワを寄せた。


探るような視線に思葉は顎を引く。



「な、なに?」


「そんなわけないって分かってるけど、カレシカノジョじゃないんだよね」


「へっ?何言ってんの、そうに決まってるじゃん。


ないない、絶対にありえないって」



來世と付き合っているのか。


これはたまに、クラスの女子から聞かれる質問だった。


その質問の意図は悟らないようにしているが、答えは当然ノーである。


來世に対して恋愛感情は欠片も抱いていないし、それは向こうも同じだろう。




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