雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕
來世とは幼馴染みで、友達で、親友だ。
思葉にとって、生まれて初めてできた大切な友達なのだ。
男女の友情を否定する人は多いが、來世は自分の親友なのだと胸を張って言える。
もしかしたら、悪友と呼んだ方がいいのかもしれないけど。
「だよねえ、ごめん変なこと聞いちゃって。
だけどちょっと噂流れてるっぽいから、もしかしてって思って念のために聞いてみただけだから」
「噂って?」
「『辻森と皆藤が幼馴染みからカップルに発展したって聞いたけどガチ?』って、練習のときにケイくんが言ってた」
ケイくんとは実央の彼氏、青原慧都(あおはら けいと)のことだ。
実央と同じ合唱部に所属していて、去年の秋から付き合っている。
來世はどうか分からないが、思葉は2回くらいしか会ったことがない。
「青原くん、どっから聞いてきたのかなぁ、そんなガセ情報」
「でも、辻森ってたまに思葉ちゃんに大声あげて駆け寄るときあるでしょ?
それ以外にも一緒にいること多いし、思葉ちゃんが下の名前で呼び捨てするのって辻森だけだし、遠目だとそういう風に見えるんじゃないの?」
「すぐそうやって誰と誰が付き合っているって話すの、あんまよくないと思うけど」
「まあ違うわけなんだし、辻森が早く三木さんゲットすればそんな噂もなくなるって。
思葉ちゃんが気にする必要なんてないよ、てか気にしたら負け」
「だよね」