鳥籠の中の運命。
静かな空間に私がノックという騒音を生み出す。
「はい」
「一花様、私です」
「翠…どうぞ」
「失礼します」
一呼吸すると、ドアをゆっくり開けた。
「……一花様」
部屋に入った瞬間、視界が真っ白なドレスを着た彼女の後ろ姿に独占される。
「一花様、本日はおめでとうございます」
「……翠」
「はい、なんでしょう」
「やっと…実感してきたわ」
そう言うと、彼女はゆっくりと振り返った。
本当……卑怯だ。
「やっと嫁ぐことに違和感しかなかった運命を受け入れる準備ができたわ」
「……」
「翠?」
「……そう、ですか」
返事をしつつ、一花様から視線を逸らす。
初めてかもしれない。
主人の一花様から視線を逸らすなんて。