鳥籠の中の運命。
「ねぇ、翠。
ここから見えるあの花壇に咲いてある青の花の名前、知ってる?」
一花様の外の花壇を指差す場所を目で追う。
あれは……
「ワスレナグサですね」
「正解、さすが翠」
「一花様はお花がお好きでしたからね、私も色々聞かれてもいいように勉強しました」
彼女の笑顔が見れるなら何だってする。
それが私の役目だから…。
「じゃあ、ワスレナグサの花言葉知ってる?」
「……」
知っている、けれどそれを言ってどうするんだ?
私が黙っていると、彼女はドレスの裾を持って私に一歩ずつ近づく。
そして、私の目の前に立つと、私の頬を撫でるように触った。
「なんで知ってるのに言わないの?
知ってるんでしょ?
ワスレナグサの花言葉は『真実の愛』、『友情』
そして、『私を忘れないで』でしょ?」
彼女は私の唇に優しいキスを落とした。
「一花様…」
「ねぇ、翠。
ドレスすら自分で要望を出さなかったくせになんで私がこの教会だけは譲らなかったか分かる?」
結婚も決まり、式の準備の時ずっと疑問だったことに彼女は口にした。
「この教会の花壇には唯一ワスレナグサがあるからよ。
どうしても翠に、貴方に伝えたかったの。
この気持ちを…」