鳥籠の中の運命。
彼女は先程とは違っていつものように桜の木を見つめる。
しかし、桜の木を見つめる目はとても寂し気だ。
「この桜の木も、もう見たくても見れなくなるのね」
「……そうですね」
「縁側からお茶を飲みながら桜の木を見つめることが当たり前だったのに…もうできないのね…」
「ここの桜は見ることが難しくなりますが、啓介様ならきっと一花様のために桜の木を庭に植えて下さりますよ」
啓介様からしたら桜の木なんて造作もないことだ。
「そうね…けれど、ここからこの桜の木を見るのが好きなのよ」
「そうですか…」
風に吹かれて桜が視界いっぱいに舞う。
「未だに実感が湧かないわ…」
あぁ…。
髪を抑えながら桜を見つめる彼女は
「2日後に嫁ぐなんて、ね」
なんて美しいんだろう。