お隣さんは元カレ?
「ちゃんと風呂入って、温まってから寝ろよ?」
「風邪引いてた人に言われたくないけど?」
「うるせーな、じゃぁな?」
「おやすみ…」
そう言った菜美に手を上げ、有馬は先に部屋に入って行った。
有馬の部屋のドアが閉まるのを見て、菜美も自分の部屋に入る。
有馬のスーツジャケットをハンガーに掛け、菜美は少しの間眺めていた。
数日後。
クリーニングから返ってきたスーツを、大切に抱えた菜美がアパートに着くと、有馬の部屋の前に女の人が立っていた。
「女の人、誰だろ?……もしかして?」
その人は有馬部屋のドアノブに小袋をかけて、菜美の方に振り返った所だった。
「あっ…」
「……こんにちは、お隣さんですか?」
「はい…」
すぐに分かってしまった。
この人が "ミキさん" だと。
菜美がつい、じっ…と見ていると、ミキが少し慌てたように口にした。