【短】イッショニ カエロウ
1年経って、僕らは中学校を卒業した。
式では彼女の名前も呼ばれたが、前に出たのは母親だけだった。
僕は、僕らは、彼女のことなんて記憶からどんどん追い出していった。
最初は千羽鶴を折った。
クラスで、手紙を書いた。
耳は聞こえているという、医師の言葉を信じて
自分たちで思い出の曲や彼女の好きな曲の入ったオリジナルCDを作った
でも、受験の時には誰一人として話題にださなくなっていた。
・・・人間は忘却の生き物
昔何かで聞いたその言葉が初めて痛感出来た。
かくいう、僕も彼女のことを話に持ちだしたりもしなかった。
彼女のことは、記憶の隅に追いやっていた。
そして、高校は県外の高校
・・・彼女と幼い頃出会った、田舎の公立高校を受験した
その選択は、彼女の弔い(とむらい)のつもりでは無かった。
何となく、中学校の同級生と一緒のとこに行きたくなくて、
家も出たかった。
彼女を、分かれ道で送ってあげればよかったと後悔するから・・・
あの、道を通ると胸が苦しいから
でも、寮のあるとこは私立ばかり・・・
自分勝手な都合だったから、私立なんてお金のかかるとこ、いけない
そこで、祖父母の家から通うことにした。