【短】イッショニ カエロウ
・・・入学してしばらくたったとき
僕には新しい彼女が出来た。
今度の彼女は、ショートカットが印象的な活発な子だ。
今も、長い髪を見ると思い出すからちょうどよかった
『ねぇ、イッショニカエロウ?』
『え?』
『だから~、一緒に帰らない?』
『ああ』
鞄を持って歩き出す
橋の上に来たとき彼女が唐突に話し出した
『ねぇ、最近すごくこわい夢見るの』
『え?』
『たーくん返して?って追いかけられる夢』
たーくん
そう呼ぶのは美由紀だけ・・・
ゾクッと背筋が伸びる
『で?どうなったんだ?
その夢は』
『え?・・・それはね
この子はあたしに捕まったのよ♪』
この言い方って・・・
『え?みーちゃん?!
みーちゃんなのか?!』
『思い出してくれたんだー
嬉しい
じゃあ、約束果たしてくれるよね?
ズット イッショニ イテクレルンデショウ』
そういって、彼女は僕のことをおもいっきり突き落とした
満面の笑顔で
夢で見たのとは比べものにならない笑顔。
綺麗な、美しすぎる顔だった。
落ちているのに浮いているような
苦しいのに、満足感があるような
奇妙で、心地好い
なぜだか、満たされた想いがした。
自然とみーちゃんに微笑みかえす。
そのまま僕は・・・
脳内のものをぶちまけた。
“僕“が死んだ日
“彼女“も死んだ
それを、みんなは最高の愛だとはやし立てた
活発なあの子は、
今も彼女による恐怖で部屋に篭ってしまった
が、それだけだ
あとは平凡な人生をみんなひたすらに繰り返していく
僕がいなくたって
イッショニカエロウ
それは、天への導き。
天に還ることを意味していたのだろうか
【完】