見つめないで勉強しなさい! ~一途なチャラ男くんに愛されました~
実は、カナちゃんは多希の自宅、合田商店の隣にある和菓子屋さんのお孫さんで、多希の家とはまるで親戚のように親しく付き合っていた。
だから、多希と多希のお父さんとの跡継ぎをめぐる確執も、小さい子ながらよく知っていた。
長丁場の戦いの後、店を継がないことを許すかわりに、第一志望大学に入りきちんと就職をする約束をさせられた多希は、人生史上初となる猛勉強生活をスタートさせた。
遅くまで灯りがついている多希の部屋を毎晩見守っていた優しいカナちゃんは、多希が初めて私の前に姿を見せたあの日の別れ際に、
「多希ちゃんは本気で受験勉強をがんばっているんだよ。本当だよ。毎日遅くまで勉強してるの、カナ見てるもん」
と、懸命に私に教えてくれた。
そして、
「だから多希ちゃんを信じてあげて。たすけてあげて。ね、せんせ!」
と切実に訴えて来たのだ。