輝照天欠-輝き、照らす、天にありし、欠かせぬモノ-
10年後

深い深い深い深い森の中、鬱蒼と生い茂る木々の僅かな隙間から差し込む月明かりの下に男の子と女の子がいました。

何やら話しています。

「僕は聞いたんだ『お金で月は買えますか』ってね」
男の子が言いました。

「それでそれで?」

女の子が欠伸をしながら言いました。

「そしたらそのおじさんは林檎をかじりながら言ったんだ『買えるさ!世界中の人に金を渡して、こう言うのさ“月を見ないでくれ”ってな』ってね」

男の子が欠伸をしながら言いました。

「ふ〜ん」

女の子がウトウトしながら言いました。

「僕は言ったんだ『僕ならそれでも見ます』ってね」
男の子がウトウトしながら言いました。

「そしたら?」
女の子が笑いながら言いました。

「そしたらその人そのままどこかに行っちゃった」

男の子が笑いながら言いました。
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