初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
 
やたらと背の高い百井くんのブレザーは、やはり普通にやたらと大きい。

顔面というか、頭からすっぽりブレザーをかぶる格好になってしまったわたしは、やっとの思いでそれを引っぺがし、息をつく暇もなく抗議した。

暗くて怖くて意外と苦しいんだぞ、バカ。


「百ノ瀬のパンツなんて見たくねーし」

「ひえぇぇぇ……っ! そういうことならもっと早く投げてよこしてよっ‼ てか、いつから見てたの!? どこまで見えたの!?」

「童顔百ノ瀬には意外なブラック」

「げっ……」

「ヒラヒラレースのセクシー系」

「じぇーっ、ほとんど丸見えじゃん‼ なんなのもう‼ 変態変態変態変態っ‼」


しかし、当の百井くんの口からは、聞くにたえない言葉が温泉の源泉のようにポコポコ飛び出す。

知らなきゃよかった衝撃の事実が次々と鼓膜を揺さぶり、わたしはこのとき、人生にはこんなにも恥ずかしい思いをすることがあるのだと身をもって体験した。


それからしばらくの間、美術室には、百井くんがせっせと室内を片付ける物音と、わたしの「ひぃっく……」という泣きしゃっくり以外、音や声といったものはひとつもなかった。
 
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