初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
「百井くん、帰りたいです」
けれど、しばらく目線で訴えても無反応だったので、いい加減空気読んでよバカと痺れを切らしたわたしは、単刀直入に希望を伝えることにした。
百井くんから誠心誠意謝ってもらいたいのが本音ではあるけれど、わたしから話しかけなきゃ永遠に無言のままだろうことも、なんとなくわかる。
それに、特にすることもないし、正直暇だ。
暇つぶしにいじっているスマホは午後5時半。
ほとんど帰宅部状態のわたしなら、とっくに帰宅し、テレビを見ている時間だ。
加えて春はまだ日が短い。
いい加減帰らないと真っ暗になるし、特に連絡も入れていないから家族だって心配するんだけど……。
「じゃあ百ノ瀬だけ帰れば」
すると百井くんは、わたしには目もくれずに言う。
いやだから、それができたらとっくにしてるよ。
ていうか、なんで百井くんのほうがちょっと怒ってるの、パンツ見られたわけでもないのにふざけんな。
「腰が抜けたままなの。動けないから送ってってよ。わたしんち近いし、ほんとすぐだし」
「すぐなら別にいいだろうが」
「わたしを送って整理に戻ったらいいじゃん。完全下校までまだ時間あるんだし、ちょっとくらい……」