初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
 
「……じゃあもうニナでいいよ」

「ニナ呼びやすいから」

「へいへい、そうですか」


百井くんに呼びやすいって言ってもらっても全然嬉しくないですけどね、と頬を膨らませながら、甘んじてニナを受け入れるしかないわたしだった。

百井くんはあれだ、いるかどうかわからないけど、ゆる怖男子というジャンルの生き物だ。

定義は、怖いけど話せば緩い。


「オイ、おぶされ」

「え、終わったの?」

「やめた。送る」


そして、基本的に口調は高圧的で命令形、人の話なんてちっとも聞いていない我が道を行く一匹狼タイプに見えるけれど、実は案外優しい面を持っている。


「じゃあ、ブレザー返すね」

「パンツ丸見えでもよかったら、もらう」

「ごめん、腰に巻かせて」

「無駄なやり取りだったな」

「……うん」


そうして、百井くんが言うように本当に無駄なやり取りを終え、わたしは「重いからね」と前置きしつつ、彼のやたらと広い背中に体を預ける。

少女漫画や恋愛小説でよくあるパターン。

女の子が男の子におんぶしてもらうとき、必ずと言っていいほど交わされるのが、「わたし、重いから……」「軽いじゃん」というやり取りだ。
 
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