初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
この絵を描いた人は、もしかしたら絵の少女に恋をしているのかもしれない――。
しばらくの間、水彩画の美しさに見入っていたわたしの頭に、ふとそんな仮説が浮かぶ。
スケッチブックの持ち主を勝手に男の子だと思い込んだからそう見えるのかもしれないし、実際はそうじゃないかもしれない。
でも、どうしてもそんなストーリーが頭から離れなくなってしまい、ページをめくるたびに、持ち主の男の子の気持ちが切ないくらいに胸に溢れる。
「片想い、かぁ……」
恋をしたことのないわたしでも、漫画や小説を読むときは主人公の女の子に感情移入する。
恋する気持ちはまだ今一つわからないのが現状だけど、そのぶん、想像ならいくらでもできた。
だって、描かれているのは全部同じ少女。
想いの大きさを測るには、それだけで十分だ。
「……告白とか、しないのかな」
スケッチブックには、半分くらいのページまでその少女の絵が描かれていた。
うしろ姿だったり遠目からだったりと、構図は様々だけれど、どれも最初のページの少女をモデルに描かれているのが一目瞭然だ。