初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
〝百ノ瀬〟と〝百井〟という、なんとなく似た名字のせいで運悪く彼の隣の席になってしまったわたしは、この2週間、本当に生きた心地がしない。
早く席替えを……!と新学期早々切望しているほど彼に恐怖心を抱いているわたしにとって、この状況で放課後の教室にふたりきり、というのは、もはや死刑宣告に等しかった。
「その絵、どう思う」
けれど、これからの2年間を彼のパシリに使われて終わる運命のかと思いきや、次に発せられた言葉に、わたしは拍子抜けしてしまった。
抑揚のない一本調子のしゃべり方なので、質問されていることに数秒気づかなかったくらいだ。
はっと我に返って彼の顔を見上げると、さっきまでの怒りの形相がすっかり影を潜めていて、顔の紅潮もいつの間にか引いているし、あんなにワナワナと震えていた拳も今は力が抜けている。
怒ったように見えていたけれど、実は恥ずかしくて赤くなっていただけ……なんだろうか。
だったらすごく紛らわしい恥ずかしがり方だ! こっちは本気で命の危機を感じたっていうのに!
「あ、えっと、すごい素敵だと思い……ます」
「マジ。嘘じゃない」
「うん。……じゃなくって、はい」