初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
「っ……」
自分の気持ちもわからないまま、足だけは歩き慣れたように旧校舎へ向かわせていた。
その途中、廊下の窓から空の様子をうかがうと、黒い雲がどんよりと立ちこめ、今にも雨が降り出しそうな気配に足が勝手に急いだ。
早足になりながら、確か鞄の中に折りたたみの傘があったような、と思い出しつつ、時間を確かめたくてスマホを取り出せば、ちょうど午後5時を指すあたりで。
美術室を出て行くあてを探していた頃は放課後になってまだ間もなかったことを思い出すと、けっこうな時間を写真部で過ごしていたんだなと、思ったより早かった時間の経過にちょっと驚く。
そして、電気の通っていない旧校舎で作業をするには今日はもう限界かもしれないと、ふと思い立ったわたしは、それからさらに美術室へと向かう足を早めた。
写真部と旧校舎の美術室は、対極の位置にある。
写真部の部室が3階の東側最奥にあれば、百井くんが使っている美術室は、1階の西側最奥。
校舎の端から端までをふたつぶん移動するようなものなので、美術室の前に着いたときには、いくら急いだとはいっても、それなりに時間がかかってしまった。