初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
「やばっ、雨が……!」
それでもなんとか長い廊下を歩き終え、生徒玄関で靴を履き替えて外に出ると、今度は頬に冷たい雨粒を感じて、急いで傘を開いた。
目深に差した傘を少し上げて周りの様子を見てみると、早めに部活を切り上げた運動部の生徒たちがわらわらと帰っていく姿があって、その中に亜湖の姿を発見する。
「亜――」
〝亜湖、一緒に帰らせて〟
そう呼び止めながら駆け出すつもりだった。
けれど、そのとたんに聞き覚えのある声が耳に入って、わたしは反射的に傘で顔を隠し、玄関の端の目立たないところに身を潜めてしまった。
「ナツくん、やっぱりダメかな?」
「合わせる顔ないですし」
「でもあれは、私が……」
「先輩。全部オレですから」
その声の主は、百井くんと実結先輩……だった。
どうやら話し込んでいるようで、若干不審者っぽくなっているわたしに気づくことなく、ふたりはそれぞれに自分の傘を広げ、そのまま並んで雨足が少し強まった中を歩き出していく。
会話の内容は、わたしにはさっぱりだった。
けれど、そこから漂うなにか特別な感じが、またわたしの胸をチリチリと焦がして。