ただの幼なじみじゃいられない!
必死で人をよけて歩こうとしていたんだけど、少し前を歩く爽太に左手をぎゅっと握られた。
突然のことでびっくりしてしまい、目を見開いた。
「そ、爽太?ちょっと、手…。」
「咲にはぐれられても困るしな。こんなときくらい離すなよ。」
「………」
人混みの中でも、爽太の声ははっきり聞こえた。
確かに予想以上の混み具合で本当に迷子になりそうだし…。
抵抗する理由もないので、手を繋がれたまま歩く。
なんか、幼稚園生みたい。
あたしたち。
お友達同士で手繋いでるみたいで。
少し笑みがこぼれた。
「咲、どこ行きたい?」
大量の人をかきわけながら、爽太はあたしの方を振り返った。
爽太のおかげで、さっきとは違ってすごく歩きやすい。