私の思い~きっかけとタイミング~
フッと目線を下げて、自嘲気味に恵太は笑った。

「でも俺は病院で美紗と会ったのは、運命だったと思っています。」

彼は真剣だ。

隣で私の身体が震える。

「あれだけ通勤の時に気になっていながら、俺は美紗に何も出来なかったんです。」

すると井上さんが口を開いた。

「俺もそうだった。転勤の内示がなかったら、ずっと会社で新田さんを見つめているだけだっただろう。」

そして井上さんは苦笑いをした。

「せっかくきっかけを掴んだのに、その後のタイミングを逃してしまった。君はちゃんとそれを生かしたのに…。」

そう言って、井上さんは私を見た。

「この自分ではどうしようも出来ない状況は、彼の言う運命なんだろうか…。」

私も井上さんを見つめる。

「私には運命とか、そんな難しい事は分かりません。でも…、井上さん、ごめんなさい。私は…。」
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