私の思い~きっかけとタイミング~
「良いから車に乗れ。」

そうしてオレンジの車の助手席に鞄ごと私を押し込むと、自分は運転席に乗る。

車はそのまま動き出した。

しばらくすると、チラリと恵太は私を見た。

「全く…。美紗は何にも分かっていない。」

正面を向き直して、ポツリと恵太は言う。

機嫌を損ねている私は鞄を抱えながら、反応をしない。

ずっと窓の方を見つめている。

すると恵太は言い直した。

「美紗は俺がどれだけ美紗の事を好きなのか分かっていない。」

今度は少し怒りが込められたその言い方。

「どれだけ美紗が欲しいか分かっていない。」

私は鞄を持つ手に力が入る。

この気持ちをどこに持っていったらいいんだ…、私。

情けない事にぽろぽろとあふれてくる涙。
< 267 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop